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2024年1月5日VOICARION「スプーンの盾」

2024年1月5日VOICARION「スプーンの盾」を観てきました。

「スプーンの盾」は二度目の観劇です。一度目は2022年。前回と比較も少しだけ交えて感想を書きたいと思います。とはいえ前回の記憶がもうだいぶ遠いので記憶違いなどがあってもご容赦いただきたい。

 

カレーム→山口勝平さん。お顔を見ると歳を重ねられたなと思うのですが、演技は無邪気に食を愛し食に生きるカレーム像が浮かんでくる。もちろん声はハリがあって若々しさを感じるんだけど、声が若いというよりそういうキャラクターを演じているからそういう声が出るんだろうなぁ。観客はその声によって各々キャラクター像を脳内で視覚的に構築しながら楽しむというのが朗読劇の楽しみ方の一つですが、今回の出演者の中でもそれを最も刺激する演者だと思います。

ちなみに前回は津田健次郎さんが演じられていましたが、津田さんはやっぱりちょっとかっこいいよりの無邪気さでしたね、色気があってそこが人を引き付ける無邪気さになってたように思います。勝平さんは子供のような無邪気さなんですけど、カレームは子供ではなく酸いも甘いも知った大人なので、そこと無邪気さとのバランスが悲しくもありまた希望でもあったのが、勝平カレームの妙だったと思います。

 

マリー→井上喜久子さんのマリーは優しさが滲み出るようなマリーでした。前回は沢城みゆきさんでしたが、こちらは小娘感のある(擦れたところを感じる)マリーでしたが喜久子さんのマリーはほんとに大きな愛情を感じるようなマリーでした。だからこそ感情が高ぶる場面ではギュッとしてこちらの涙腺も刺激されるわけですが、喜久子さんも時々台本で顔を隠されていたのはもしかして……。朗読劇なので演者は基本たって動かずに演じていますが、喜久子さんが台本を持ってない方の手を握ったり開いたりしていて、自然と手で感情を逃しているのが印象的でした。

 

ナポレオン→前回とは一番イメージが違ったかもしれない。前回は山口勝平さんがナポレオンだったのでちょっと愛嬌のあるナポレオンというイメージでしたが、中井和哉さんのナポレオン怖さのあるナポレオンでした。だからこそ感じる人間味もあって。勝平さんのナポレオンって言葉のテンポに計算というか(演技の)プランを感じて、流石プロの技やなみたいなのがあってそこに軍人ぽさを感じたり、その愛嬌との差に孤独を感じたりとかどこまでが勝平さんの計算なのかなぁみたいな。中井さんのナポレオンはどちらかというと素直さを感じるというか、もとは田舎者の青年というところをに軸をおいて、その青年だったナポレオンがやがて皇帝という肩書に狂わされていく怖さや孤独の苦しみという、到底(体験的に)共感しないキャラクターに「人間ってそうだよな」って共感を生んでるのかなと思います。というか私達(デカめの主語にしたけどOK?)は皇帝になったことなんかないし何千何万という兵士の命を預かることもないけれど、感情的に共感するのはナポレオンなんだよな。

 

タレーラン関俊彦さん演じるタレーランは何というか…ほんとに音声そのものの持つ力みたいなものを感じたんですけど。役柄的にも外交…演説などで人を説き伏せる役どころのキャラなのでこれはキャスティングの妙と言わざるを得ない。前回は諏訪部順一さんだったのでこちらもほんとに聞かせる声をしてらっしゃったけど。関さん、声の震えや高低が聞き入ってしまうんですよね〜単に私が関さんの声好きなだけかな?いやそんなことはない震えはともかく高低については意図的でしかないし、それこそ声優の技なんだと思います。それが終盤に崩れていく様に胸打たれてるんだからよ、こっちは。涙も流すっつーの。やっぱりこの人も結局孤独だったのか、というのを強く感じることによって物語の深みを増すし輪郭もはっきりしたなと思いました。

 

「人生は固いパンの上にしかない」

人は、良し悪しではなくそこに与えられたものを食べ生きていくしかない、そういうセリフだと私は思ってるんですけど、このセリフが私は大好きです。最近、すぐに良いか悪いかで物事を語ろうとしますよね。でも実際は良し悪しではなくなるようにしかならない事の方が世の中には多いですよね。良いも悪いもなくすべてを煮込んだスープで締められるっていうのが素晴らしい余韻だなと思います。

 

最後に、VOICARIONは生演奏がありますが、指揮者がいないのでバンドマスター(?)のピアノ奏者の方がタイミングなどを指揮してらっしゃいますね。その動きを見るのがすごい好きで。それに合わせて音が動くのが面白くて、つい見てしまうんですよね。